FC2ブログ

川内原発審査の問題①:住民の安全性を踏まえない規制委審査だ

★川内原発審査の問題①

*植田和弘・京都大学大学院教授::「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」***「東洋経済オンライン 2014-8/6 BY 中村 稔 :東洋経済 編集局記者 」より転載

*植田和弘(うえた・かずひろ)●1952年、香川県生まれ。京都大学博士(経済学) 、大阪大学工学博士。1994年、京都大学経済学部教授。1997年、京都大学大学院経済学研究科教授、2002年から京都大学地球環境大学院教授兼任、現在に至る。専攻は環境経済学、財政学。

・・・・・・・・・

 原子力規制委員会が7月16日に九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)に対し、新規制基準に基づく審査で初めてとなる、事実上の“合格証”を出した。現在、8月15日を期限とするパブリックコメント(意見公募)の期間中にあり、それを踏まえたうえで、規制委は正式な合格を判断する意向だ。その後、地元同意や設備の使用前検査を経て、早ければ今秋中にも再稼働の方向との見方が強まっている。

 しかし、川内原発の審査結果や審査プロセスには、問題点も数多く指摘される。審査の対象にはなっていないが、地元自治体が策定し、住民の安全確保に必須となる防災・避難計画に対しても、批判が少なくない。こうした問題点を有識者へのインタビューを通じ、シリーズで検証する。第1回目として、植田和弘・京都大学大学院教授(環境経済学)に聞いた。

――原子力規制委員会による川内原発の審査結果、審査プロセスについてどう考えていますか。

いくつか問題点がある。まず、政府の方針は「安全性の確保を大前提に原発を再稼働させる」というものだが、その場合の「安全性」の中身が問題になる。

政府の説明では、規制委の新規制基準の下での適合性審査にパスすればいいということだが、田中俊一委員長は、適合性審査にパスしただけであって安全と認めるものではない、と説明している。安全性が確保されたかどうかを、誰が責任を持って判断するのかがあいまいだ。

@本当に世界で最も厳しい基準なのか

また、新規制基準が世界で最も厳しい基準というのも、かなり怪しい。具体的には、世界ではすでに導入されているコアキャッチャー(原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留する設備)や、二重の格納容器などが、必ずしも審査の要件になっていない。技術的専門家からも「世界最高とは言えない」との評価がある。

仮に世界最高水準の基準だとしても、それで本当に十分なのかという本質的な議論もある。われわれが求めているのは安全性の確保だが、それはリスクの評価と関係している。やはり、福島原発のような事故を二度と起こさないようにしないといけないと思うが、そうしたリスクについて明確になっていない。

これらは原子炉の技術基準に関わる問題点だが、さらに重要なのは、住民の安全性を踏まえたものになっていないことだ。

非常事態を想定しているとは言うが、福島事故の教訓を生かしているとは言い難い。福島事故では、放射能汚染の多いほうへ住民が避難してしまったことや、重度の病気の方々がギリギリの選択を迫られるようなことがあった。が、規制委の審査では、住民の避難計画をしっかり立てることが要件になっていない。

――避難計画に関しては、地元でも多くの問題点が指摘されています。

病気の方々の避難方法や、住民が一斉に避難した際の道路の渋滞の問題など、現在の避難計画に実効性が本当にあるのか、という問題がある。

また、避難というのは、受け入れてくれるところがあって初めて成り立つわけで、本来は「避難受け入れ計画」というものが必要になる。内閣府が地元自治体の避難計画策定を支援することになっているが、避難受け入れ計画のほうは見ていない。そのため、本当の意味で避難できるのかは、何も担保されていない。これでは、新規制基準の適合性審査にパスしたとしても、本来確保されるべき安全性のごく一部しか審査していないということになり、まったく安全性の確保にはなっていない。

@誰も審査を信用しなくなる恐れ

――再稼働の判断は時期尚早であると。

 原発の稼働問題は世論調査を見ても反対のほうが多く、(東日本大震災後は)大きな変化がない。ここで不十分な審査基準と審査プロセスの下、責任もあいまいな中で再稼働のゴーサインを出せば、規制委の規制方式が形骸化し、誰も審査を信用しなくなるおそれがある。それは非常にまずいことだ。新規制基準による最初の審査であるからこそ、もっときっちりとみんなの納得が行くようにしないと、再稼働はさらに難しくなるだろう。

――火山の影響審査が不十分だという指摘もあります。

非常に大事な問題だ。新規制基準は(各原発が立地する地域特有の)ローカルな問題に十分に対応するものとなっていない。川内原発の場合は、火山の影響が大きな問題となっている。これまで周辺で起きた巨大噴火を考えれば、川内原発へ影響が及ぶ可能性がある。そのことが十分に評価されたとは言えない。そもそも原発を立地する場所として適切であるのかが問われている。

――原発再稼働が遅れると、化石燃料の輸入代金で貿易赤字が続き、国富が流出したり、電気料金が上昇したり、電力の安定供給にも支障をきたしたりする弊害があるため、「再稼働を急ぐべき」との意見も多い。

「原発稼働ゼロのリスク」がよく強調されるが、まず確認しておく必要があるのは、もし不十分な形で原発を稼働させて再び大事故が起こったら、“日本は終わり”と言っても過言ではないことだ。そうなった時のリスクの大きさを考えれば、みんなが十分に合意し、確認して再稼働させる必要がある。拙速は避けるべきだ。

関西電力・大飯原発(福井県大飯郡)について、6月の福井地方裁判所の判決にもあるように、原発が引き起こす被害の大きさを考えると、経済的なベネフィット(効用)よりもはるかに大きいリスクがある。判決では「人格権」という言葉を使っていたが、そもそも経済的効用などとは比較衡量の対象にはならないとしている。それほど原発の重大事故によるリスクは大きいということだ。

原発自体が安定供給の電源か、というとそうではない。何らかの事故が起これば、大量の発電能力を持つ発電所が一度に止まってしまう。止まれば、かなりの期間、検査もしなくてはならない。原発が安定供給の手段というのは間違った理解の仕方だと考えられる。

@原発のコストは安くない

また、原発は予測が難しく、コストやリスクの計算が難しい、厄介な電源と言える。電力会社の範囲内での計算だけではなく、社会全体へ与える費用を計算に入れた場合、原発のコストは決して安いとはいえない。

つまり、安全性、経済性、倫理性の3つの点で、原発は稼働に値しない状況にあると考えられる。

さらに、電気代の問題も大事な問題だが、これは電力システム改革(自由化による料金・サービス競争促進)とも結びつく問題であり、中長期的性格の課題として理解すべきだ。

国富の流出問題についても、国産の再生可能エネルギーを増やしていくことこそ、国富の流出を抑え、地域経済の活性化、さまざまな技術革新にもつながり、プラス面は大きい。そのほうが国民も安心ができて、将来性のある展望が持てる。

――省エネ、節電も電力の安定供給に寄与し、化石燃料の輸入減少につながる。

日本の経済社会全体の構造を、省エネ、節電型の方向へ持っていくことは、たくさんのビジネスチャンスも生む。そういう意味で、再生エネや省エネの推進には、二重、三重のメリットがある。

川内原発「避難計画は十分でない」~立地首長・岩切秀雄市長に聞く

★川内原発「避難計画は十分でない」~立地自治体の岩切秀雄・薩摩川内市長に聞く
***「東洋経済オンライン 2014-8/2 BY 中村 稔 :東洋経済 編集局記者」より転載

九州電力・川内原発(鹿児島県)は全国で初めて、規制委の新規制基準に合格した。立地自治体の薩摩川内市長はどう考えるか。

 九州電力の川内原子力発電所1、2号機が7月16日、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に、全国の原発で初めて“合格“の内定を受けた。正式な合格は8月15日までのパブリックコメント(意見公募)の結果を反映した後で、規制委の審査合格はあくまで再稼働のための必要条件の一つにすぎない。

 今後の最大の焦点は、地元による再稼働への同意だ。地元の範囲については、原発から30㎞圏内の地域を含む自治体すべてを対象にすべき、との意見もあるが、鹿児島県知事は、川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の市議会と市長、そして鹿児島県の県議会と知事という、4者の承認が必要との見解を示している。

 東洋経済では、立地自治体である薩摩川内市の岩切秀雄市長に川内原発再稼働に関して取材を申し込んだところ、書面での回答となった。かねてより再稼働「容認」派である岩切市長は、再稼働の必要性について、「安全性の確保を大前提としたうえで、当面の間は必要」との考えを示した。

 また再稼働に対する市民の考え方について、「賛成・反対どちらの意見もあることは重々認識している」と前置きしつつも、「一昨年の市長選挙では、安全確保を前提として再稼働を容認するという私と、再稼働に反対するという候補との一騎打ちであったが、投票いただいた市民の方々の8割以上の方が私に投票していただいており、市民から付託を受けたものと考えている」とした。

 一方、同市が昨年11月に策定した、原子力防災・避難計画については、「詳細な内容まで見ると、十分ではない」とし、今後の見直しが必要との考えを明らかにした。「十分ではない」という内容の中身について、改めて確認したところ、緊急避難時における要援護者(寝たきりの高齢者や障害者など)のための寝台車の確保、在宅の要援護者の避難先での対応(病院などの確保)、避難する住民や車両のスクリーニング(放射線汚染検査)の場所の設定、緊急時に使うバスの手配など、との回答が市の防災安全課長を通じてあった。

 放射性物質が大量に原発外部へ放出された緊急事態時の避難計画については、同市議会や市民から、それ以外にも多くの問題点や懸念が指摘されている。

 たとえば、市内各地区単位の避難経路は、有事の風向きが不明な点を考え、2ルートを設定している。が、鹿児島市を中心とした避難先の施設は、現状で地区ごとに1カ所であり、最低2カ所は必要との意見が多い。また、有事における道路の渋滞状況の想定が実効性を欠くとの指摘や、より詳細な避難時間のシミュレーションを求める意見、さらに駅やショッピングセンターなど人が多く集まる施設や企業での避難指示のあり方を見直すべき、といった要求もあった。

 こうした懸念に対する解決策を含め、市民の不安を解消し、避難計画を市民に周知徹底するまでには、まだ課題が多い。岩切市長はかねて「安全性の確保が再稼働の大前提」と強調しており、地元住民の安全対策の要といえる避難計画の課題を十分に解決しないまま、再稼働の同意判断を行うことは難しいと見られる。

 岩切市長に対する質問と回答は以下のとおり。

――他の原発に先駆けて、川内原子力発電所の審査書案が了承されたことを、市長としてどう受け止めているか。

審査書案に対して、外部から科学的・技術的意見を広く募集され審査書が確定するものと認識しているが、今後においても原子力規制委員会においては、厳正かつ慎重な審査・確認を行っていただき、併せて、九州電力においては、適切な対応をお願いしたい。

――川内原発ないし全国の原発の再稼働の必要性に対する考え方は。

4月11日に策定されたエネルギー基本計画に、原子力発電は「重要なベースロード電源」と位置付けられた。が、大量かつ安定的な電力供給を行える原発は、経済活動および国民生活への影響、またCO2(二酸化炭素)などの地球温暖化問題などを総合的に考慮したとき、あくまでも安全性の確保を大前提としたうえで、当面の間は必要であると考えている。

――防災・避難計画については万全と考えているか。要援護者への対応や避難経路、避難場所などについて、県内周辺住民から懸念も上がっているが、今後の対応は。

詳細な内容まで見ると、十分ではない。できるものから、順次解決していく。

――地震や津波、火山など自然災害リスクを、どう考えているか。また、原子力規制委員会に、火山の専門家が入っていないことについてはどうか。

今回策定された規制基準および各評価ガイドは、福島原発事故の教訓およびIAEA(国際原子力機関)などの国際的な基準を踏まえ、特に地震や津波、火山などの自然現象に関しては、従来の基準を強化または新設されるなど、重点が置かれたものと考えている。

なお、火山に関する影響評価ガイドに関しても、2012年にIAEAが策定した、火山に関する安全基準(SSG-21)などを基に策定されており、慎重かつ厳正な審査・評価が行われているものと考えている。

@メリットは雇用増や市財政への安定収入

――川内原発誘致以来のメリットとデメリットは。

地元経済へのメリットは、大きく、建設段階と運転開始後の2つに区分されると考えている。

建設段階では、地元事業者の建設受注に伴う雇用増などの波及効果があるほか、運転開始後は関連企業による雇用増や、原発関係者の常駐、さらに定期点検時における作業員の宿泊などに伴う経済効果がある。

また、立地自治体の財政面では、運転開始後、固定資産税を徴しているほか、建設時点から電源交付金(電源立地地域対策交付金)を受けており、これらを活用して、不十分だった公共施設などの整備を推進できたこと、また安定的な収入として、市の財政運営にも寄与しているなどのメリットはあると考えている。

一方、原発立地に伴う地域経済面でのデメリットは、それほど大きなものではないと考えている。

なお、立地自治体としての行政対応の面では、原発事故に対する不安やその危険性に関する市民などの意見に対し、適切に対応しており、ていねいな取り扱いは今後とも必要なことと考えている。

 (編集部注:川内原発は1号機が1979年1月に建設開始、1984年7月に運転開始。2号機が1981年5月に建設開始、1985年11月に運転開始した。建設費は2基合計で約5000億円。2013年3月末現在の社員は288人で、協力会社が約1070人。また、薩摩川内市の2013年度予算では、国と県からの電源交付金を約12.3億円、使用済み核燃料税を3.9億円計上している。電源交付金の累計額は250億円を上回り、九州電力が同市に納めた固定資産税は、累計500億円を超す)

――地元住民の再稼働に対する考え方をどう見ているか。

市民の中には、再稼働について、賛成・反対、どちらの意見もあることは重々認識している。

しかし、一昨年の市長選挙は、安全確保を前提として再稼働を容認するという私と、再稼働に反対するという候補との一騎打ちであったが、その結果、投票いただいた市民の方々の8割以上の方が私に投票していただいており、市民から付託を受けたものと考えている。

(編集部注:2012年11月の市長選では、無所属現職で民主・自民・公明・国民新の各党が推薦する岩切秀雄氏と、原発即時廃止を唱える無所属新人で共産党が推薦する山口陽規氏との一騎打ちとなった。結果は岩切氏が4万4816票を獲得、9978票だった山口氏を大差で下して再選を果たした。投票率は70.31%だった)

@国や規制委は市民に対して説明を

――住民説明会など、地元同意までの今後の課題と規制委、国に対する要望は。

再稼働の判断については、規制委から市民に対し、福島原発事故の教訓などを踏まえ、どのような基準を策定され、その基準に対し、川内原発はどうであったかを説明いただいたうえで、議会の意見などを踏まえ判断したいと考えている。

したがって、規制委に対しては、市民に対し、わかりやすい説明を行っていただくこと、および国に対しては、4月に閣議決定されたエネルギー基本計画に関し、国民に対する十分な説明など、国民理解を得る取り組みをお願いする。とともに、同計画で再稼働に関し示された「立地自治体等関係者の協力と理解を得るよう、取り組む」とは、具体的にどのようなアクションを起こされるのか、示していただきたい。

――川内原発には3号機の増設計画があり、市長として同意することを2010年に議会で表明したが、計画がストップしている現在の状況をどう考えているか。引き続き、増設を推進する立場か。

4月に閣議決定されたエネルギー基本計画においては、「原子力は安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源と位置付け、政策的には既存原発の徹底した安全性の確保を目指し、規制基準に適合すると認められた場合は再稼働を認めること」、また「原発依存度については、可能な限り低減させるとの方針の下、安定供給等の観点から確保していく規模を見極める」としており、新増設に関する国の考えは明確に示されていない、と認識している。

このような現状において、原子力政策は国の責任において進められるものと考えている。

新規制基準に適合=安全が保証された、『わけではない』

★川内原発"初合格"でも置き去りの課題と懸念=これで安全が保証されたわけではない
***「東洋経済オンライン 2014-7/26 BY 中村稔・東洋経済編集局記者」より転載

“大きな山”を越えた後には、何が待ち受けているのか──。

原子力規制委員会は7月16日、九州電力の川内(せんだい)原子力発電所1、2号機が新規制基準に適合していると認め、事実上の合格証に当たる審査書案を了承した。

規制委は昨年7月に新規制基準が導入されて以来、12原発19基の審査を行ってきたが、審査書案の作成は初めてだ。規制委の田中俊一委員長は会見で、「川内原発にとっても、最初の審査書案がまとまったという意味でも、大きな山を越えた」と語った。

再稼働までになお必要な手続きが残るが、川内原発が新基準導入後、最初の再稼働となるのはほぼ確実。ただ、時期は流動的だ。

@再稼働のタイミング

今後の手続きとしては、7月17日から30日間、一般から科学的・技術的意見(パブリックコメント)が募集され、それを踏まえて正式な審査書が8月中にもまとめられる。

その後、規制委は、審査結果について地元へ説明に行く。説明会は、立地自治体の鹿児島県薩摩川内市をはじめ5カ所程度で開催されるが、日程は未定。別途、安倍晋三内閣も地元に赴き、再稼働に理解を求める。それらを踏まえ、同市と県の首長、議会が審査書に同意するか判断する。両首長は再稼働に前向きだ。

この地元同意手続きと並行して、工事計画どおりに機器が整備されているかを調べる「使用前検査」が行われる。初めて設置される機器もあるため、検査には最低1カ月はかかる見込み。

「不具合が見つかれば、工事をやり直す可能性があり、数カ月以上かかる場合もある」(原子力規制庁の担当者)。早ければ10月ごろの再稼働となるが、年をまたぐ可能性も十分ある。

日程以上に重要なのは、審査合格で原発の安全性がどれだけ高まるかだ。田中委員長は「川内原発で格納容器が破損するような重大事故が発生しても、放射性物質による環境の汚染は福島第一原発事故時の100分の1を下回る」と、審査により安全性が大幅に向上する効果を強調した。

が、規制委の審査は、あくまで新規制基準への適合性審査。田中委員長が念を押すように、「安全を保証するものではない」。菅義偉官房長官は「規制委が安全と認めた原発は再稼働させる」と言うが、規制委の真意とは異なる。

では、これで周辺住民は安心して暮らせるのか。その問いに田中委員長はこう答える。「安心だと言えば、(規制委として)自己否定になる。われわれは最善を尽くしてリスクを低減する基準を作り審査してきた。これをどう受け止めるかは地元の判断だ」。

その地元で特に懸念が強いのが、半径160キロメートル圏内にある五つのカルデラの噴火による火砕流や火山灰の影響だ。規制委は、川内原発に影響を及ぼすような破局的噴火の可能性は低く、監視強化で前兆把握も可能との立場だ。

だが、たとえ予知できても短期での核燃料搬出は困難、という見方もある。地元・鹿児島大学の井村隆介准教授は、「規制委の委員5人の中に火山の専門家が一人もいない。活断層などと比べ、議論も足りない。科学的にきっちり調べる必要がある」と語る。

@地元で反対署名拡大

また、原発30キロメートル圏内の自治体に求められる、重大事故時の住民避難計画にも不安が根強い。全域が同圏内に入る鹿児島県いちき串木野市では、実効性のある避難計画がない中での再稼働に反対する緊急署名が、全人口の半数を超えた。同市議会は、要援護者の避難対策拡充や、風向きを考慮した複数の避難所設置などを、県に求める意見書を可決した。今後、こうした動きが広がる可能性もある。

そもそも防災・避難計画は規制委の審査の対象外。地元自治体に対して策定の助言はするものの、妥当性を判断するのは地元自身である。しかも、その重要性は大きい。

16日の規制委で大島賢三委員は、原発の安全確保を3輪車に例えた。「前輪が規制基準、そして後輪が事業者の安全文化と防災・避難計画。これらがしっかり機能することが必要だ」と強調した。福島事故においては、その三つすべてが欠陥を露呈し、被害を拡大させた。

残された課題はまだある。原発事故のリスクを定量化できておらず、リスク負担の仕組みもあいまいなままだ。

@課題は先送り

原子力損害賠償法では、原発事故の一義的責任は電力会社にあり、無限責任を負う。だが、福島事故では、東京電力の株主や債権者は法的な責任を取っていない。一方で、国が実質的に東電へ過半出資し、賠償資金を立て替えて支援している。廃炉・汚染水処理や除染にも兆円単位の国費が投入されつつある。

もし川内原発で福島のような事故が起きた場合、九州電力に損害を負担する力はない。とどのつまり、負担するのは国民である。

問題は、国民が最終的なリスクの受け皿になることを、了承しているかだ。福島事故を経て、本来ならあらためて民意を問う必要があるが、今も先送りされている。

政府・自民党の原子力政策も玉虫色のままだ。2012年12月の衆議院選で、原発ゼロを掲げた民主党が政権を自民党に譲った。自民党は「原発依存度をできるだけ下げる」としてきたが、どの程度下げるかは今年4月に閣議決定したエネルギー基本計画でも明らかにしていない。先送りという意味では、放射性廃棄物の最終処分場選定も同じだ。

福島事故を受け、ドイツやスイスは脱原発へ舵を切り、イタリアは原発ゼロ堅持を決めた。が、当事国の日本は原発事故責任の所在も原発政策の方向性もうやむやにしたまま、再稼働へと大きく一歩を踏み出そうとしている。

不可思議な玄海町長選

★原発城下町・玄海町の不思議な選挙 ***「NEWS HUNTER 2014-8/1」より転載

玄海町長選挙の投票日を告知する垂れ幕 原発立地自治体の首長選挙で、これほど盛り上がりに欠けるケースは珍しいのではないか――町長選挙の真っ最中である原発城下町・佐賀県玄海町の様子を取材しての偽らざる感想だ。3期目を目指す現職に新人二人が挑む構図だが、原発の是非をめぐる論戦は皆無。町長のファミリー企業が、原発マネーによる事業を独占するという“町政の歪み”を正そうとする動きさえない。原発に依存し、活力を失った町の選挙戦とは……。

@立候補者3人 論戦乏しく
 先月29日に告示された玄海町長選に立候補したのは3人。現職と元町議の新人は原発再稼働容認。飲食店経営の新人だけが再稼働に反対だ。ただ、選挙事務所を構えているのは現職と元町議のみ。原発再稼働に反対する新人は、事務所を設置していない。唯一の原発反対派でありながら、街頭での訴えはなし。選挙運動といえば選挙公報、実施予定だという新聞折り込みのチラシ、公営掲示板のポスターだけで、現時点では町内の有権者に訴えの内容が届いていないというのが実情だ。原発再稼働のカギを握るのは玄海町長。はたから見ると重要な選挙のはずだが、地元には選挙中特有の熱気というものが感じられない。

@玄海町長選挙ポスター掲示場

 人口約6,000人の玄海町では、直接・間接に原発がらみで生活の糧を得ている町民が多く、「原発がなくなれば、町が成り立たなくなる」(玄海町 50代男性)というのが実態。町財政を支えているのも原発で、玄海1、2、3、4号機にかかる固定資産税、原発交付金などが主な収入源だ。原発城下町で、原発再稼働に反対する声を上げること自体がむずかしい状況なのだ。

 昨年9月に行われた、定数12を争う玄海町議選。原発の是非について論戦が交わされるものと期待していたが、案に相違して立候補者は12名。選挙は無投票で幕を閉じてしまった。出馬予定は13名とされていたが、直前になって一人が取りやめ。「原発再稼働を前に、町内で原発の賛否についてゴタゴタするわけにはいかない。調整の結果だ」――そう断言する町の関係者もいる。原発の是非を、立地自治体だけに決めさせる現在の日本の原子力行政は、やはり間違いだと言わざるを得ない。

@現職町長は唐津市民
 
奇妙なのは、現職と新人で飲食店経営者の住居地が唐津市だということ。町のトップを決める選挙で、他の自治体の住民が争うという、珍しい展開となっているのである。新人候補はともあれ、現職町長が原発から離れた唐津市に住むというのは、どう考えても無責任。これが許されてきたのは、現職批判を声高に唱えることが難しい現実があるからに他ならない。現職町長は、ファミリー企業である地元最有力ゼネコンをバックに、強固な支配体制を築いているのだ。

@町長一族が支配する町
 
玄海町めぐっては、町長の実弟が社長を務めるファミリー企業が、町発注工事や九電の仕事を独占。膨大な利益の一部が、株主である町長の懐に還流するシステムとなっていたことが分かっている。「薬草園」、「次世代エネルギーパーク」、「町道・長倉-藤平線」の道路工事――原発マネーを原資とする事業のほとんどの工事に、町長のファミリー企業が参加している。

 薬草園も次世代エネルギーパークも、町長が推し進めてきた事業。町道整備に至っては、県や唐津市といった関係自治体に何の相談もなく工事をはじめ社会問題化。結局、「県道」として整備させることを県に認めさせ、無駄な公共事業を増やす格好となっている。

 一連の原発マネー事業を町長が発案し、発注。それを町長や町議のファミリー企業が受注するという状況が続いており、町政の歪み具合は深刻だ。じつは、玄海町で問われるべきは、この歪んだ町政の刷新のはずだが、新人陣営から厳しい批判が出ている様子もない。建設業者の反発を恐れてのことと見られているが、これでは町政刷新など夢のまた夢だ。

 ちなみに、前回の町長選。町長の陣営が同町の現職町議5名に車上運動員の報酬としてそれぞれ9,000円の現金を支払っていたことが判明。町議は特別職の公務員であることから、選挙当時の活動実態によっては、公職選挙法で禁じる「公務員の地位利用による選挙運動」にあたる可能性があったことが、分かっている。

 玄海町長選の投開票は8月3日。正直、結果にはあまり期待できない。

★現職勝利が示す原発城下町の「歪み」***「NEWS HUNTER 2014-8/4」より転載

玄海町長選挙 原発城下町に“正義”はなかった。3日、九州電力玄海原子力発電所がある佐賀県玄海町の町長選で、現職の岸本英雄町長が勝利。3選を果たした。岸本氏をめぐっては、実弟が社長を務める地場ゼネコン「岸本組」が原発マネーによる町の建設工事を独占。その利益が町政トップである岸本氏に還流するという、不正に等しい構図がまかり通ってきた。この選挙で町政刷新が図れるかどうかに注目していたが、原発マネーに依拠する町の有権者が選んだのは岸本氏。歪んだ町政の継続を肯定した形だ。
 この町に、原発再稼働を決める権限があるのだろうか?

@争点化されない「原発の是非」 

 玄海原発 低調な選挙戦だったことは否めない。事実上の一騎打ちとなった今回の町長選、岸本氏の対抗馬となったのは元町議。しかし、岸本氏も元町議も原発再稼働容認。政策論争は影をひそめ、原発の是非が問われることも、新たな町の未来像が提示されることもなかった。

 両候補の訴えの違いは、原発マネーを何に使うのかという点だけ。そのせいか、投票率は80・69%。選挙戦が行われた8年前(88.83%)を8ポイント以上下回っている。

 町民の多くが、玄海原発に生活の糧を求めざるを得ない状況では、原発の是非が選挙の争点になるはずがない。昨年の町議選では、定数12のところに立候補者12人。無投票で議席が決まり、原発をめぐる論戦が展開されることはなかった。

 今回の町長選、HUNTERが注目したのは、原発マネーによる公共事業や九電関連の工事を独占的に受注してきた岸本組と町長の一体関係を、町民が認めるか否か。原発再稼働の同意権限を持つ町に、まともな感覚が残っているかどうかを見極める材料にもなると考えたからだ。

@歪んだ町政

 岸本組 玄海町が発注する公共工事は、電源3法交付金などの恩恵を受け、同規模の自治体のそれをはるかにしのぐ件数だ。そうした中、岸本組は毎年、町発注工事の15%前後を受注し、金額ベースでは事実上“独占”。工事の発注形態はほとんどが「指名競争入札」で、恣意的な業者選びが公然化した状況となっている。

 岸本氏が町長に就任してから事業化されたのが「薬草園」、玄海原発の啓発施設「次世代エネルギーパーク」、「町道長倉-藤平線整備」。主として核燃料サイクル交付金を原資とした事業費は、薬草園が約12億、次世代エネルギーパークが15億。町道整備に至っては、わずか1.9キロの道路整備に28億円という、法外な額を投入している。いずれの工事も、岸本組が受注しているのは言うまでもない。

 町長は、岸本組に仕事を与える一方、自身が保有する同社の株を譲渡する形で、毎年数百万円の収入を得ており、原発マネー還流のシステムが出来上がっている。他の自治体では考えられない癒着構造が、今も続く。政治倫理条例も、情報公開条例もないのだから、やりたい放題。他の自治体なら考えられない歪んだ町政が、玄海町では当たり前になっていた。そして今回の町長選。町民が選んだのは、歪んだ町政の継続だった。町政だけでなく、町全体が歪んでいるとしか思えない。

@歪んだ町が持つ「生殺与奪」の権限

 万歳三唱が行われた岸本組の講堂 歪みの象徴は、当選決定後の光景。岸本陣営では、選挙のたび、選挙事務所のそばにある岸本組の講堂で「万歳三唱」を行っており、昨日もまったく同じ愚行が繰り返された。公共事業の発注権者が、受注業者の施設を使って勝利のバンザイ――まともな感覚ではない。

 問題は、この歪んだ町が、原発再稼働に対する同意権限を持っていることだ。原発再稼働にあたっては、立地自治体の同意が求められるだけで、周辺自治体の意思が反映されることはない。法的には何の裏付けもない仕組みが、福島第一原発の事故後も、なお続いている。滑稽なことに、原発によって生かされる町が、他の自治体の住民の生殺与奪権を持っているのである。不正の臭いに蓋をするような町に、これが許されるとは思えないが……。
プロフィール

としとんどん

Author:としとんどん
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード