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18.放生会

 先日、仕事の話をいただいたコンサルのYさんの車に同乗し、大分県のN市を訪ねた。工場の増築を機に環境整備を図りたいと思うがどうしたらよいだろうか、という相談で、工場の社長さんと三人で現場を見て回り、打合せをおこなった。夕刻、別の打合せがあるYさんと、最近の仕事の話や雑談をしながら、宗像方面へ戻る。古賀で降ろしてもらい天神行きのバスに乗る。都市高速に入って左手を見ていると、筥崎の浜と鳥居が見えた。宮地嶽神社もそうだが、筥崎神社は本殿から海へ向かって一直線に参道が伸びている。ほんの短い時間だったが、参道の暗くなりかけたクス並木の中に黄色く灯る露店の列が見えた。その日は十二日で、放生会の初日だった。「放生会」は仏教の教え「殺生戒」から来たもので、殺してしまった生き物を慈しむために、鳥や魚などを放つ供養の儀式。各地の八幡で行われる「放生会」はホウジョウエと呼ばれるが、筥崎宮の「放生会」はホウジョウヤと呼ばれている。京都の石清水八幡宮、大分の宇佐八幡宮とともに、筥崎宮は日本三大八幡宮のひとつ。最終日の十八日、「玉割り」で鳩を放つ。筥崎宮の放生会の始まりは延喜十九年(919年)で、山笠やどんたくよりも歴史的に古い。あちこちの放生会には、豊穣祭すなわち収穫を祝う祭の観を呈するようになった例もある。
 二日後の夕方、混雑を避けるため、吉塚から本殿(参道から見ると裏側)のほうへアプローチした。梅雨には紫陽花が咲き誇る園地を左にみて、紅い提灯の下がった門をくぐる。本殿を囲む回廊に展示されている池坊の生け花を、自分流に眺めたあと、少しはずれの店で夕食をとることにした。腹ごしらえをして、参道に向かっていると、新生姜を手にした今風の若いカップルとすれ違う。新生姜は放生会の土産の定番で、博多の秋を彩る風物詩でもある。昔、箱崎の農家では生姜を栽培していて、とれたての生姜を露店に並べていた。博多のごりょんさんは、濃い緑の葉がついた新生姜を放生会の土産に買って帰り、近所に配ったりしたという。そして、もう一つの風物詩、チャンポン。ビードロ細工(ガラス工芸品)の一種であるチャンポンは、昭和四十六年に復活した放生会名物。喜多川歌麿の浮世絵「ビードロを吹く女」に描かれているのがそうだ。中国から伝来し、ビードロ、ポッピンと呼ばれ江戸末期に流行り、放生会で売り出されたらしいが、大正時代にはいったん姿を消した。人集りのなかをゆらゆらと進む。露店で売られているものは、以前よりいくらか安価になっているように思える。例年、古本市がたっている場所まで来るが、見当たらない。係員らしき人にたずねると、やはり出店していないようで、他の人にも訊かれたとのこと。見世物小屋が並ぶ一画に行き、珍しい蟹釣りをみる。川蟹のツガニのようだ。それにしても、金魚、緑亀、ヒヨコ、鰻、蟹と掬ったり、釣ったり、死なせたり、食べたり、捨てたり、これって放生会なんだろうか、と思いつつ、竹細工品などを売っているコーナーへ移動。やはり、以前に比べるとコーナーが極端に小さくなっている。昔、他の店の大将とは風貌や雰囲気がずいぶん異なるおじさんから、手箒などを買ったことがあるが、なかなか造りが良く手頃な値段だった。放生会も少しずつ様変わりしつつあるようだ。












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