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「福島に戻れ」と国は言うけど(コピペ)

★留学事業をNPOが開始 : 松本へ子は疎開~「福島に戻れ」と国は言うけど

福島県の子どもたちが、長野県松本市にあるNPO法人運営の寮に入り、地元の学校に通う「まつもと子ども留学」が始まった。初年度は女子八人が入寮する。原発事故による被ぱくを避ける試みだが、被災地では政府が後押しする、情報共有によるリスク低減の取り組みである放射線「リスクコミュニケーション(リスコミ)」が加速している。子ども留学と安心を強調するリスコミ。どちらに理があるだろうか。(上回千秋、榊原崇仁)


 「事故から三年以上。福島にはまだ、子どもを避難させたくてもできない人たちがいる。国が何もしないのなら、私たちが動かないといけないと思った」

 松本市の四賀地区にある「松本子ども寮」で、NPO法人「まつもと子ども留学基金」理事長の植木宏さん(43)は力を込めた。原発事故当時、福島県須賀川市に住んでいた植木さんは、妻と幼い息子二人とともに二0一二年七月、松本市ヘ自主避難。松本で他の子どもらを受け入れられないかと考えるようになった。

 そこで、医師出身でチェルノブイリ事故後に現地で住民の治療に当たった松本市の菅谷昭市長に相談。財政支援こそなかったが、寮として使える格安な物件の紹介などに協力してくれた。

 福島では事故後、低線量被ぱくの危険性が指摘されているが、国は原発周辺の一部地域を除いて、住民を早期に帰還させる姿勢を崩していない。避難する権利も認めず、郡山市の子どもが市に「集団疎開」を求めた仮処分の申請も、一審福島地裁郡山支部、二審仙台高裁のいずれでも却下された。

 ただ、不安を抱えている住民は少なくない。今回長女を入寮させた四十代の女性は「国がいくら安心だといっても信用できない。かといって、高齢の親や夫の仕事を考えると、福島を離れられない。娘と別れて暮らすのは寂しいし、家族が離れ離れになるのはよくないけれど、それよりも被ぱくのリスクの方が怖かった」と打ち明ける。

 松本子ども寮では、福島市や郡山市などに住んでいた中学生は二年四人と一年三人、小学六年一人の計八人の女子が築約三十年の二階建て家屋で共同生活を送り、新年度から地元の小中学校に通う。寮費は一人月三万円で、高校卒業まで暮らす予定だ。

 寮には元教諭のNPO法人のスタッフ二人が住み込み、食事や身の回りの世話をする。「子どもたちが将来『ここで暮らせてよかった』と思えるような場所にしていきたい」と根岸主門(しゅもん)さん(29)は意気込む。

 中学二年の女子生徒(13)は「福島にいるときは親からあれこれ口うるさく言われたり、食べる物にも気を使わないといけなかった。こっちに来ていろんなストレスから解放され、ほっとしている」と話す。

 法人には留学したいという問い合わせが他にも数件来ているというが、課題は少なくない。寄付で賄う年間運営費一千万円余のうち、今のところめどがついているのは約五百万円。

 植木さんは「楽な事業ではないが、安全だ、危険だと議論をしているうちに、どんどん被ぱくが進んでしまう。少しでもリスクを減らすために、国は今からでも住民に避難する権利を認めてほしい」と訴えた。

 一方、福島県では原発事故の収束にめどが立たない。除染も難航し、住民らは放射線の影響を懸念している。そこで行政が熱を注ぐのが安心を強調するリスクコミュニケーションだ。

 福島第一原発から三十キロ近く離れながら、事故直後に大量の放射性物質が降り注き、全村避難している飯舘村も例外ではない。

 村は一二年六月に「健康リスクコミュニケーション推進委員会」を設けた。

 委員は十七人。住民代表や学校関係者らのほか、東京大付属病院の中川恵一准教授、国際放射線防護委員会(ICRP)委員を務める東京医療保健大の伴信彦教授、県民健康調査を請け負う県立医科大の宮崎真氏らも加わる。

 リスコミ推進委は少人数の車座集会や講演会を繰り返し開くほか、一時帰宅や除染、健康調査等の話題を扱う広報紙「かわら版道しるべ」を三千二百ある全世帯に配っている。

 「かわら版」は既に十一回発行されているが、安心感を植え付ける内容一色と言っていい。
 一二年十二月発行の第三号では中川氏の講演内容を取り上げ、「原発事故前から放射線は宇宙から降り注いでおり、大地にも大気中にも食物にも放射性物質は含まれている」「一00ミリシーベルトの被ぼくは野菜不足と同程度の影響」と紹介。一三年二月の第四号では、村民向け放射線勉強会で「被ばくで子どもの甲状腺がんが増えることがあっても少なくとも四、五年かかる」と述べた伴氏の言葉を掲載した。

 一三年九月の第八号では、甲状腺検査の説明会で宮崎氏が「がんの原因は放射線だげでない。たばこや肥満、職場環境やストレスも関係がある」と述べた様子を扱い、今年一月の第十号では「一00ミリシーベルト以下の被ばくによって、がんなどの影響が引き起こされるという明白な証拠はない」と強調する記事を載せている。

@賠償減を狙う?

飯舘村でのリスコミには国が深く関わっている。推進委の取り組みは復興庁の委託事業「福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業」の一環で、復興庁が二月に示したりスコミ施策集でも飯舘村の実践が先進例として紹介されている。

 リスコミに躍起になる国の真意はどこにあるのか。

 国学院大の宮井益郎教授(日本公害史)は「事故が収束せず、除染も遅れている現在、危険な状態があるのなら、住民にその現状を伝えないといけない。しかし、国は早期帰還を実現させて避難者の生活支援の費用や賠償を抑えたい。安全を装い、帰還を促そうというのがリスコミに込められた思惑だ」と指摘する。

 ただ、避難生活を送る飯舘村民はそうした国の姿勢に冷ややかだ。伊達市の仮設住宅で暮らす六十代の女性は「国の言うことを真に受ける人なんているか。いままでさんざんだまされてきた」と憤慨した。

 子どもたちの受け入れに協力した松本市の菅谷市長は「国がいくら安心だと主張しても、不安に思う福島の親たちは子どもを外出させようとは考えない。子どもは運動不足で転びやすくなったり肥満になったりする。世の中への関心が薄れて無感動、無気力になる危険性すらある」と心配する。

 「原発は国策なのだから本来は国がやらなければいけないことだが、低線量被ばくのリスクが高い子どもは一定期間避難させて、のびのびと過ごさせるべきだろう。松本の留学制度をモデルケースとして、全国の自治体が支援する体制を整えていく必要がある」

*****【中日新聞・特報 2014年4月3日】より転載
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