FC2ブログ

20.美術散歩

 秋が深まりつつある。今年の紅葉は期待できそうで、十一月末あたりには、筑後、柳坂の櫨並木でも歩いてみたい。「文化の日」の三日、ひさしぶりに福岡市の須崎公園にある県立美術館へでかけた。県立美術館は以前(昭和39年~昭和59年)は、図書館機能を主体にした県文化会館で、館内の一画で美術展示を行っていた。まだ、久留米に住んでいた頃、見にいった「ツタンカーメン展」の印象は強烈だったことを憶えている。昭和60年、改修され、現在の美術館となった。都心の緑のオアシスではある須崎公園だが、円形と放射状の線形をした園路は、美術館に向かう人のことが考えられておらず、現在もそのままである。(上京を夢見ていた「海援隊」のメンバーが、須崎公園の野外音楽堂で演奏していた時代があったらしい。今は、ホームレスの人達の生活拠点となっている感がある。) この日、見に出かけたのは「エッシャー空間泥棒の挑戦展」(普通に「エッシャー展」で、よさそうなのだが)。滝から流れ落ちた水が水路を上っていったり、地上の畑が空飛ぶ鳥になっていたりする、あの「騙し絵」だ。知らなかったが、ハウステンボス美術館のコレクションから百点ほど選出されたものらしい。作品の脇に、図と地、視覚的な錯覚、二次元と三次元、などの言葉が頻出する説明があるが、説明抜きに愉しめるものばかりだ。なかでも眼を引いたのは、樹の葉の上に乗った水滴の絵である。水を透かして見える葉脈と水に映った周囲の風景が克明に描かれている。水面を見て、同じ視覚体験はしていてもなかなか描けるものでは無い。空想を巡らす才能が、深い観察や的確な描写に裏打ちされていて、「騙し絵」だけではない力量が伝わってくる。もうひとつ気にいったのは、横長い田園風景の上に、左から右へと姿をあらわす鳥が、一番右端では都会の風景へと変化しているものだ。場所や時間、出来事をコラージュして一つの画面に構成する絵を描きたいと思っている自分には、とても興味深いものだった。一階のロビーで、若者たちが企画している展示を、なつかしい気分で見て廻り、すぐそばにある市民会館へ向かった。夕刻から始まる京劇を観るためだ。演目は、西遊記の中のいくつかの場面と覇王別姫の定番となっている場面である。ステージの両脇に翻訳の文字が縦に流れる電光掲示板が準備され、簡単な日本語のナレーションが入るため、とても判りやすい。主役の孫悟空役の卓越した演技が光った。京劇と歌舞伎のつながりは不勉強だが、京劇も見栄を切るところで拍手、ということになっているようだ。覇王別姫は平成6年に観た映画「さらば、わが愛」(香港映画)の印象が強烈だったこともあり、こちらのほうに関心があった。秦朝末期、天下を争っていた項羽は、劉邦の計略で四面楚歌となる。項羽の妾、虞姫は酒宴の際に剣舞を披露し、項羽の心を慰めたあと、自ら命を断つ。ステージの艶やかな剣舞を観ていると、映画で虞姫を演じていた、今は亡きレスリー・チャンや相手役のチャン・フォンイー、コン・リーのもうひとつのドラマが思い出された。終演後、ロビーでサイン会が行われ、中高年のファンが携帯カメラ片手に殺到しているのを横に見ながら、帰途についた次第。折り目正しい「文化の日」の過ごし方も決して悪くないのだった。「エッシャー空間泥棒の挑戦展」は今月末まで。













スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

としとんどん

Author:としとんどん
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード