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増田寛也レポート「地方が消滅する」は本当か? 

★「地方創生」論議で注目、増田レポート「地方が消滅する」は本当か? 
***「『THE PAGE 2014-10/27』 BY *木下斉氏」より転載

安倍政権は、今国会を「地方創生国会」と位置づけ、国会では地方活性化に向けた政策についての議論が始まった。「地方創生」という考え方に大きな影響を与えたとされているのが、「2040年までに896の自治体が消滅する」と予測した日本創生会議(増田寛也座長)の発表である。これに対し、数々の地方都市の街づくりのプロジェクトにかかわる、木下斉(きのした・ひとし)氏は、「地方消滅という言葉が一人歩きしている」と警鐘をならす。地方が抱える課題とは何か。木下氏に聞いた。

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元総務大臣の増田寛也氏が代表を務める、日本創生会議が「地方消滅」を唱えたことで、「人口減少社会」、そして「消滅可能性自治体」の議論が大きくクローズアップされています。そして、安倍政権は、今国会を「地方創生国会」と位置づけ、地方活性化に向けた政策について議論するとしています。

 大筋として「地方が消滅する可能性がある」という話は自体は間違っていないのです。しかし、一連の「地方消滅」の議論では、「地方そのものの衰退問題」と、「地方自治体の経営破綻の問題」、さらに「国単位での少子化問題」、この3つが全て混在して取り扱われてしまっています。しかも、東京から地方への人口移動を中心に据えれば、地方も活性化、地方自治体も存続、さらに少子化まで解消するという話になっています。そんなうまい話はないわけです。



1 . 消えるのは、「地方そのもの」ではない

 まず「地方消滅」という表現には大きな問題があります。地方消滅と言えば、地方そのものが消滅してしまうようなショッキングな印象を与えますが、正確には、増田氏は、人口減少により「今の単位の地方自治体が、今のまま経営していたら潰れる」ということを唱えているに過ぎません。あくまで人口減少が続き、半減したら、その自治体は今のままでは立ち行かないから消滅してしまうと言っているわけで、その地方から人そのものが消し飛んでしまうなんてことは書かれていません。つまり、地方消滅ではなく、「地方自治体の破綻」を彼なりの人口統計分析から警告を発したにすぎません。

 しかし、この「地方消滅」という言葉はマジックワードとなってひとり歩きし、今の「地方創生」論議の発端となり、その内容を規定しています。

 ここに問題があります。まず、「自治体消滅=地方消滅」というように、地方自治体と地方を同一視していることが問題です。あくまで自治体はその地域における行政のサービス単位であり、その単位は常に組み替えを含めて環境に対応して再編され、人々の生活を支えていくのが基本。人々は、自治体が人々の生活を支えるという「機能」のために納税をしているのです。自治体のために地方に住んでいるわけでも、自治体を支えるために納税しているわけでもありません。

 もう一つの問題は、「地方が消滅してしまう」という危機感を煽り、少子化問題や、地方自治体の経営問題などを全て人口問題に置き換えてしまうこと。合計特殊出生率を急激にあげ、さらに大都市から地方へ人が移動すれば、地方問題が解決するといった議論になっています。人口統計だけを軸にした「地方消滅」論は、地方が抱える様々な問題を棚上げし、本質から目を背けさせてしまうことにも繋がりかねないミスリードを引き起こす可能性があります。

2. 自治体は直近の財政破綻を危惧すべき

 自治体の破綻は、人口減少だけが要因なのでしょうか。いいえ、それより先に財政破綻の問題と向き合う必要があります。財政非常事態宣言を発し、解除できていない自治体は既に全国各地に存在しています。夕張市のような自治体破綻の事例は決して稀なケースではなく、今後は多くの自治体が直面する可能性が多くあります。先日も千葉県富津市が、2018年には財政破綻に陥り、夕張市同様の財政再生団体に転落する見通しであることを明らかにして衝撃が走りました。2050年などを待たずしても、自治体自体が財政問題が原因で消滅する可能性があるのです。

 過去の失政によって生み出された膨大な自治体債務をどうするか、福祉を含めた今後の支出増に対し、減少し続ける、限りある税収でどのように対応していくのか。破綻しない社会を実現する自治体経営の課題と向き合うことが先です。地方自治体の財政問題を人口減少問題に置き換えてしまうことは、本来、多くの自治体では直近の懸念事項である財政問題への対応を遅らせる懸念さえあります。なんでも人口減少が悪い、人口減少が改善されれば全て解決する、というのは幻想です。

3. 国民を移動させる前に、自治体経営の見直しを

 「地方消滅」論での処方箋では、地方自治体の経営改革には全く触れられていません。

 人口が少なくなるのであれば、公務員の絶対数の削減も必要でしょうし、人口が減少してもサービスは最低限維持できるように、複数の自治体が事業組合などを組織して共同で広域での公共サービスを提供するなどして、従来の分散かつ非効率なやり方を見直す必要があります。さらに遊休公共施設や道路・公園などの利活用促進などによって、新たな公共収入を生み出すことも積極的に検討されるべきと思います。

 「地方消滅」論は、自治体はサービス提供のやり方も変えるというわけでもなく、今の自治体単位もそのままにしたまま、人口問題で地方が消滅するかもしれないから危険だ、と言っているのです。今のままで消滅しないためには、国民を大都市から地方へ移動させよう、また受け入れる地方の都合も無視して、都市から地方に人を受け入れろ、というのは、単に帳尻を合わそうという発想かつ、政治・行政を中心においた都合のよい社会の見方ではないかと思うのです。

 少なくとも少子高齢化問題は20年以上前から指摘されてきた問題です。私が小学生の頃から学校の教科書にのっていた社会問題でした。予測されていたのです。これからも人口は一定の予測が可能なものごとです。それに対応して、自治体経営そのものを見直していくことのほうが確実かつ必要な政策であると思います。

 大手予備校の代々木ゼミナールは、20年以上前から、来たるべく少子高齢化による生徒数減少を想定し、ホテルや高齢者住居への転用等を想定して自社ビルを建てていました。昨今、地方の代々木ゼミナールを閉校し、計画通りにリノベーションして使うようになっています。一方で、全国の地方都市の駅前には、この10年以内に開業したにも関わらず、ほぼ廃墟になっている公共施設が入った再開発施設が山ほどあります。この差はどこからくるのか。経営の持続可能性に対する意識の差であると言わざるをえません。

 自治体経営のミスの積み重ね、将来の変化は見えているにもかかわらず、過去の方法の見直しをしない姿勢が、今の自治体の深刻な財政問題を引き起こしているのです。間違いの見直しをせずに、国民が移住し、それを地域の人々が迎え入れれば全てが解決するということはないと思います。ザルに水を注ぐような話で、むしろ移住したとしても自治体が破綻する可能性はあるわけですから、とても無責任な話です。

4. 大都市部の少子化問題と向き合うべき

 「地方創生」の議論で見落とされている問題は他にもあります。地方の魅力を高め、地方に移住する人が増加すること自体はもちろん、良いことですが、大都市部における少子化問題と人口減問題を考えなくてはなりません。具体的にいえば、大都市における出生率をどう改善するか、です。国単位での少子化を問題とするのであれば、すでに人口の半数が居住する大都市部での出生率低下の原因を解消し、出生率改善に務めるというのが本筋でしょう。例えば、少子化の要因としては、都市化によって生計費や養育費が地方よりも上昇していることが長らく指摘されています。これは大都市に生まれる子供と地方に生まれる子供の「逆差別」になっているとも言えます。この問題を、国レベルで福祉政策として向き合って解消し、出生数の増加に繋げていく、という視点も重要でしょう。

 こうした大都市部における出生率低下の原因を分析し、対応することが大切であり、大都市だから出生率が改善できないと放棄し、地方にいけというのは極めて無責任です。大きな流れは都市への人口流入なのですから、その現実にそった少子化対策をとっていくことが大切であると思います。大都市であるから出生率の改善は実現できないわけではありません。世界をみれば、パリ、ロンドン、ベルリンといった世界の大都市では、この10年、出生率が改善してきており、OECD加盟国にみられる、人口密度が高くなればなるほど出生率が低くなるという負の相関関係は確実に改善されてきています。

5. ギャンブルのような一発逆転ではなく、潰れない地方政策を

 仮に、地方から大都市圏への人口移動が止まり、多くの若者が地方で子供を生むようになったとしても、それが国全体の労働力として成長するまでには一定の時間がかかります。それまで、深刻な財政問題を抱える地方自治体が今の経営のままで維持される保証は全くありません。今の経営を続けることを前提としたうえで、「地方に人が移住したり、爆発的に出生率が改善しなければ、地方自治体は潰れて、地方そのものを支えることは放棄せざるを得ない」という現在の議論ほど無責任な話はないでしょう。

 「地方消滅」論の大変わかりにくいところは、地方自治体が今のままでは破綻する、という警告は重要ではあるものの、その根拠と処方箋に大いなる問題があるという点です。指摘自体は正しい。しかし、これまで述べてきたように、問題の所在は、人口問題だけではなく、処方箋としては、人口問題だけでは解決せず、むしろ政治・行政の運営・経営に関する問題が大きいのです。人口問題については、地方から考えるのではなく、大都市部の出生率問題と向き合うべきです。日本より人口が少ない国でも公共サービスを立派にやっている国はあるわけですから、できないはずはありません。

 今必要なのは、人口が爆発的に増加する時代に対応した自治体経営や各種社会制度を見直すことではないでしょうか。人口移動だとか、地方創生交付金の創設といった、一発逆転を狙うギャンブルのような非効率な「量」を追う施策ではなく、自治体経営の構造を社会の変化に適応させて「潰れない地方自治体」の構築を可能にする、生産性の高い地方のあり方を検討することでしょう。


6. 繰り返される地方政策の間違いと向きあおう

 地方はそう簡単に再生も創生もしないと思います。けれども、そこに生まれ、そこに育ち、そこで生計をたてられるようにする人を1人でも多くすること。人口がたとえ減ったとしても、苦しくとも破綻しない行政サービスを実現するために、様々な工夫をするべきと思います。

 私はこの16年ほど地域での取り組みをしてきています。地方の大都市部である札幌、熊本、北九州における中心部再生のためのまちづくり会社の経営から、岩手県の紫波町、人口が3万4000人で、財政が決してよくない自治体でのプロジェクトにも協力しています。紫波町では、地元の方々が中心となり、財源のない自治体に代わり、民間が公共施設と民間施設を一体化した施設を銀行融資等で事業的に開発し、雇用まで生み出しています。公民連携事業などの推進を通じて、小さくても、また財政力がなくても、新たな方法で地方を魅力的にし、仕事をつくり、若者が戻り、さらに固定資産税などの税収増まで実現するのです。人口が減ることを前提としつつも、新たな仕事づくりを地方で行うことは十分可能です。

(参考) 「岩手県紫波町「オガールプロジェクト」 補助金に頼らない新しい公民連携の未来予想図」
http://www.huffingtonpost.jp/2014/09/10/shiwan5795002.html


 このように、地方では、国に頼らず、地方自治体の経営を見直し、さらに地域自体に新たな経済を生み出すという知恵が既に生まれています。必要なのは手助けではなく、現実と向き合い、未来に対して行動する地域の人たちの決意と知恵にあります。私は現場で取り組みをする中で、その可能性を強く感じています。

 しかしながら、政策的には幾度と無く、地方政策は盛り上がってはしぼむことの繰り返しでした。そして、多数の失敗事例が起きていてもそれらをメディアが取り上げることも少なく、行政の知見としても残らず、反省なき地方政策がながらく展開されて、今の地方の姿が生まれています。

 この10年ほどだけでも、地域再生法、都市再生法、中心市街地活性化法などをはじめとして、今回の地方創生で語られているような施策と予算が山ほど供給されてきました。しかし、役所の縦割りを解消するため内閣府に地域活性化統合本部が設置されたものの抜本的には変わらず、地方活性化のためにコンパクトシティといいつつ、単に中心部に立派な箱モノ建設がされるだけで、しかもそれらは破綻懸念になるなど、むしろ、施策が原因で、地方の負担を増やして衰退を招いていることもあります。掛け声の内容は正しいものであったとしても、実際に行ってきた内容や結果を精査しなければなりません。

 国のモデル事業に取り組んで幸せになった地域はどれだけあるでしょうか。私はあまり知りません。むしろ、せっかく地道な努力を行って成果を出していた取り組みが、ある日、国からの莫大な予算を与えられ、それが要因になって潰れてしまった事例を目の当たりにしたこともあります。「地方消滅」と煽り、国が積極的に関与して、自治体に計画をたてさせ、それに予算をつけるといった従来型の政策を今回もまた繰り返せば、ますます地方の消滅を早めてしまいかねないと思います。だからこそ、「地方消滅」の中身を今一度しっかりと中身を分類して精査し、過去の施策の過ちと正面から向き合うことが必要です。「地方創生」に必要な方法論は、意識的に国からの支援や方法論から出来る限り自立して、人口の縮小と向き合い、それを打開しようとしている地方にこそ見て取れると思います。

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*木下斉(きのした・ひとし):一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事。内閣官房地域活性化伝道師。全国各地でまち会社の経営や新規事業立ち上げなどを行い、調査研究や政策提言も行う。『まちづくり:デッドライン』(日経BP)など。ブログ「経営からの地域再生・都市再生」http://blog.revitalization.jp/
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