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日本のリベラリズムの危機③:「反リベラリズム」が、日本を息苦しくしている

★「日本のリベラリズムの危機」を考える③:「反リベラリズム」が、日本を息苦しくしている
 BY ジェフリー・キングストン :テンプル大学(日本校)教授

@天皇の父方の祖先は朝鮮半島から渡来

天皇の言葉に対する反応はメディアではあまり取り上げられておらず、どれほどの日本人がこの件を知っているのかはわからない。だが、それは珍しいことではない。2001年に、天皇の父方の祖先(桓武天皇の生母)が朝鮮半島から渡来したことについて天皇が発言した際、この発言を取り上げたのは朝日新聞だけだった。韓国の新聞が天皇のこの発言を賞賛すると、このことは日本でも大きく報道された。韓国メディアが日本を褒めるのは異例だからだ。

しかし、この時に韓国から好意的な反応があった理由を理解していたのは朝日新聞の購読者だけかもしれない。対外強硬主義的な他の新聞社は、読者の多くが読みたがらない記事をあえて取り上げるようとはしなかったからだ。この当時、日本と韓国は2002年FIFAワールドカップの共催国となることが決まっており、天皇のこうした告白は友愛と協力の感情を促進するために計画されたものと思われた。

天皇はこれまで模範的ともいえる程に、国民に対して慰めと慈しみを表してきたため、国民の天皇と呼ばれている。天皇は1月18日に4年ぶりに相撲を天覧したが、彼があいさつをすると全観衆が立ち上がって拍手をしながら喝采を送った。深い愛着の表れともいえるこの光景は、天皇に対する国民の尊敬を物語っている。

天皇の言葉は、安倍首相が主導する右傾化の流れと、その行末についての多くの日本人の懸念を代弁している。2014年12月の衆議院における自民党の勝利は、安倍首相に対する是認というよりも、むしろ反安倍派に対する告発だったが、安倍首相は今、自らの今後のイデオロギー的な見通しを認識せざるを得ない立場に立たされている。投票率は戦後最低の52%を記録し、世論調査では国民がアベノミクスに盛り込まれた景気回復の実行を求めており、憲法改正や日本の安全保障上の役割の拡大にはほとんど関心をもっていないことが示されている。この意味で、天皇は権力に対して真実を語りかけたのだと私は思う。

右派は痛ましい過去を考察することなく未来を手に入れようとしており、一方左派は、70年にわたり近隣諸国から日本を分断している過去を、悔恨をもって謙虚に理解することで前進しようと考えているように思われる。

@多くの日本人は中韓政府を恐れている

21世紀において、多くの日本人は戦争加害者であることに疲弊し、中韓政府が日本を歴史の鉄床に容赦なく打ちつけることを恐れている。未検証の過去の歴史問題を軽率にも葬り去ろうという日本の取り組みは、たしかに国家主義的な熱狂を焚きつけるファクターになっているが、皮肉にも近隣諸国に政治的・外交的なアドバンテージを与えていることも明らかだ。

日本のメディアは、たとえその結果が必ずしも示唆に富むものではないとしても、歴史問題についての議論に意欲的に取り組んでいる。このことは大きな強みだと思う。しかし、非常に息苦しくなっている。反リベラルの情勢下で、自分たちと相容れない意見を表明する人々を威圧し、攻撃し、時には暴力に訴えてまでその声を封じようとする恐ろしい集団がいる。そうした集団の標的になりたくないと、多くの記者は考えている。

1990年には、日本の戦争行為に関して昭和天皇に責任があると示唆する発言をしたことにより、長崎市長が襲撃された。したがって、このような恐怖には根拠があるといえる。保守主義の代表といえる政治家たちが、脅迫的な気分を助長している過激集団や犯罪集団とつながりをもっているという事実には当惑させられる。

安倍首相に対するブレーキ役となるべき民主党は、2012年選挙における壊滅的な大敗以降、混乱状態にあり、2014年選挙でも平凡な結果に甘んじている。

2009年選挙で、民主党は大勝利を遂げたが、これは主に広がり続ける格差に対する日本人の不安によるものだ。格差は、日本に浸透した平等主義の規範と価値にそぐわない状況であり、戦後の雇用の安定に対する重点的な取り組みと矛盾する。

自民党は、格差を助長し、雇用の安定を崩壊させた新自由主義的改革について責任がある。雇用不安の影響は、2009年のリーマンショック以後の年越し派遣村に表れている。年越し派遣村は厚生労働省前の路上から始まり、職を失った派遣労働者のための炊き出しが行われた。この運動は、日本のセーフティーネットがいかに機能を失っていたかを示していた。

自民党が掲げる自己責任の原則は、国民が窮地に立たされた時、それはその個人の責任だと突っぱねることを意味していた。民主党はこの状況を、景気回復の糸口を見いだせずにいた自民党を打ち破る勝機と捉えた。

鳩山由紀夫首相は就任に際し、2006年のロードマップを見直し、普天間基地を県外に移設するという沖縄県民への選挙公約を実現することを表明した。また、日本は米国および中国と等距離の関係を築く方向へ向かうべきだという見解も鳩山氏は示した。しかし、鳩山氏の構想は失敗に終わった。

今の民主党は政党としての独自性を見いだせずにいる。政策に対する意見は分裂し、党員が表明するイデオロギーは、左派から右派まであまりにも雑多だ。どの問題に関しても統一された立場を打ち出すことが難しいことは、代表選挙における岡田克也氏の決選投票での辛勝にも見て取れる。

岡田氏は民主党の中道的な立場を表明しているが、自民党との政策上の大きな不一致はあまり見当たらない。たとえば、岡田氏は集団的自衛権については制限をすべきだと考えているようだが、第9条の再解釈には反対していない。

民主党の左派メンバーは、歴史問題に関する議論についてもっとリベラルな立場を打ち出したいと考えているように思えるが、現在の世論の下では瀬戸際に立つ同党にとって決定的ともいえる反発を呼ぶ恐れがある。

尖閣・魚釣諸島についての二国間論争においては中国の主張にも一理あるとコメントした鳩山元首相がメディアから激しく批判されたことを思い出してみるとよい。2012年安倍内閣で防衛相を務めた小野寺五典氏に至っては、鳩山氏を国賊と呼んで批判した。南京大虐殺に関する和解についての鳩山氏の言動も日本国内では評判が悪い。

@民主党が進めようとしていたこと

民主党は日韓を対立させている重大懸案のひとつである慰安婦問題を解決しようと試み、これに関する協議はまとまりかけたが、2012年12月に決裂した。この合意条件の下では、金銭による賠償に加えて、在韓日本大使が存命の元慰安婦を訪問し、謝罪の手紙を届けることになっていた。

問題は、日本が植民地時代の残虐行為に対する法的責任を受け入れるか否かということだった。日本側は道義的責任を受け入れることは快諾し、償いと和解という人道上の意思表示を行ったが、法的責任を認めることは断固として拒否した。

最終段階でのこの協議決裂は双方による非難の引き金となり、裏切られたという感情を生じさせてしまった。非公式の情報によれば、日本の外交官は、協議がまとまりかけていたにもかかわらず、韓国側が法的責任を認めるよう求めるという土壇場での合意条件の変更を行ったことについて不満を漏らしていたという。

同様にオフレコでの発言だが、韓国の外交官は、法的責任を回避するために入念に計算された合意内容は、慰安婦や韓国国家の尊厳を回復するために十分な、最大限の意思表示と呼べるものではなく、この点で妥協できなかったのだと主張していた。そしてその後、安倍首相が政権に就任するとすべてが白紙にもどったのだ。日本国民は、こうした経緯も知っておく必要がある。

(構成:ピーター・エニス記者)

***「東洋経済オンライン 『アメリカから見た世界 2015-1/25』」より転載
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