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34.途上

 昨年と同じように雪となった正月元旦、故郷(久留米)で質素ながら楽しみにしているおせちや雑煮、屠蘇を戴いた。最近の時勢を思うと余りおめでたい気分でもないが、春を待つ自然に倣い、芽出たいという願望に置き換えてみる。三日、久しぶりに青空がひろがり、宗像大社に詣る。本殿横から入る「鎮守の杜の道」を進み石段を上ると、照葉樹林に囲われた「高宮祭場」があった。宗像天神降臨の地と伝えられる古代祭場で、実にシンプル、祭儀の原型を見た気がした。お年玉がわりに、新年にふさわしい情報を二つ。七日、福岡天神アクロスの二階ギャラリーで田井裕さんの写真展「京の華 舞妓・芸妓」が開かれていた。京都に五ヶ所あるという花街の舞妓さん、芸妓さんたちを撮ったもので、茶屋の佇まいを背景に、艶やかな美しさが作品から匂い立ってくる。黒(髪、衣装)と白(白粉)を基調とした色面に、紅(口紅)が絶妙である。田井さんによると、特に宮川町に美人が多いとのこと。調べてみると、宮川町界隈は古くから芸人の集まる花街で、格式を重んじる祇園とは違い、粋人が好む自由で気さくな雰囲気があるらしい。ホームページがあり、写真展の中のいくつかの作品を見ることができる。もう一つは、筥崎宮花庭園の冬牡丹。十三日のテレビで紹介されていたが、雪の中、藁帽子の中に咲く淡紅色の牡丹がいい。雪の降る日に愛でるのがポイントだろう。しばらくは花庭園で楽しめそうだ。
 さて、皆さんに五年近く読んでいただいた本欄も今回でお開きとなる。少し振り返りながら、言い足りなかったこと、仕事への自分の思いなどを語ってみたい。書き始めの頃は、自己紹介ということでランドスケープを考える原点になった生家や幼少期の思い出、大学や勤めていた設計事務所のことを話題に挙げたが、ダラダラと散漫な文脈となってしまった。季節に合わせたつもりの挨拶も、皆さんの目に触れる頃には気候がすっかり変わっていたりして、紋切り型の導入も難しいと思った次第。話のテーマは、ランドスケープデザインの技術やプロセスについて正面から論述するのは力量不足で苦手なので、旅や散策といった個人的な体験の中に、住まい(の外部空間)づくりのヒントとなっているものを織り込んで、叙景文(西村さん曰く)としてつづることが多かったようだ。ただ自分としては、皆さんに紹介した旅先や街角の風景には、住まいや暮らしを楽しく豊かにする手がかりが潜んでいるものと信じている。フェリーの通わない島には、手つかずの豊かな自然や、肩を寄せ合って暮らす島民の生活が感じ取れる風土景観があちこちに見られるし、福岡西新や若松、小倉、島原と都市の規模に関係なく、古くからある市場や商店街には対面販売のあたたかな雰囲気が感じ取れる。クリークや堀割のある町では、水辺を取り込んだ住宅のたたずまいや趣のある川船の姿を見かけるし、珍しい海産物にも出会ったりする。久住や阿蘇には、山並みや高原の雄大な眺めが楽しめるポイントや施設も多い。外部空間は、歩き訪ね、遊び、楽しみ、味わい、学ぶことのできる、優れた教材でもある。もう一度読み返し、主旨をくみ取っていただければ幸いである。
 自分の仕事への取り組みは、住まい(の外部空間)づくりに関して言えば、生活の拠点としての住まいを内に閉じるのではなく、庭や庭の向こうに見える風景や街並みへと続き、繋がるように、外へと広げていく空間づくりを、そしてロケーションや住み手の嗜好を踏まえた屋外空間の活用法を提案するもので、これからも続けていきたいと思っている。先の見えにくい、地図のない旅の途上にあるようにも思えるが、鹿児島ヤネダンの人たちのような自立の精神を大切にして、歩んでいこう。
 西村(工務店)さん、読んでいただいた皆さんに、深い感謝の意を表します。本当に、長い間、ありがとうございました。
                               造景工房 中山 寛

 





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