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「カフカの階段」から転落する高齢者

★高齢者の9割が貧困化 「下流老人」に陥る5つのパターン
***「週刊朝日 2015年7月3日号」より抜粋・転載

高齢者の貧困が問題になっている。内閣府調査の<世帯の高齢期への経済的備え>で、60~64歳で貯蓄が「十分だと思う」と答えた人は3.6%。「かなり足りないと思う」と答えた人はその10倍、35.5%だった。

「老後の貧困は、ひとごとではないのです」

 そう警鐘を鳴らすのは、生活困窮者支援のNPO法人「ほっとプラス」の代表理事で社会福祉士の藤田孝典さんだ。6月半ばに出版した新刊『下流老人』(朝日新書)で、「このままだと高齢者の9割が貧困化し、貧困に苦しむ若者も増える」と書く。

 藤田さんは貧困高齢者を下流老人と名付けた。普通に暮らすことができず下流の生活を強いられる老人という意味で、日本社会の実情を伝える造語だという。

「年収が400万円の人でも、将来、生活保護レベルの生活になる恐れがあります」(藤田さん)

 実際に生活保護を受給する高齢者は増加中で、今年3月時点で65歳以上の78万6634世帯(受給世帯の約48%)が生活保護を受けている。昔なら子ども夫婦に扶助してもらうことが当たり前だったが、今は核家族が多い。頼りの子どもは派遣切りやニート。高齢で大病して貯蓄も尽きたら……。

 藤田さんは、『下流老人』の中で高齢者が貧困に陥るパターンを五つに大別した。
【1】本人の病気や事故により高額な医療費がかかる
【2】高齢者介護施設に入居できない
【3】子どもがワーキングプアや引きこもりで親に寄りかかる
【4】熟年離婚
【5】認知症でも周りに頼れる家族がいない

 本人の病気と家族の介護をダブルで抱える人もいれば、60歳を過ぎて妻と別れ、途方にくれる男性もいる。

「1部上場企業で働いてきた男性が、離婚してから食事や趣味にかけるお金を節約できず貧困になる人もいます」(同)

 こんな例もある。藤田さんが警察で保護した60代の男性は、不動産会社社長で、バブル期は資産が2億円あった。だが土地が転売できず破綻。それでも社長っ気が抜けなかったらしい。

「6年前に彼がお弁当とお茶をスーパーで盗んで捕まったとき、所持金が100円なのに、スーツを着込んでいました」(同)

 この元不動産会社社長は「食いっぱぐれるはずがない」「老後の心配無用」と年金も払っていなかったという。

 80歳の老母と45歳の息子のこんな生活苦もある。福祉施設に勤める息子の給与は手取り23万円。亡き夫の会社が傾いたときに息子が借金を被り、返済が毎月数万円ある。築40年の賃貸マンションの家賃を息子が払い、母親が光熱費と食費を払う。母親は病院通いをしながら、息子の大学時代の奨学金も年金から返し続ける。

「奨学金は息子名義だが、何年か払えない時期があり、親の私に支払い通知が来た。額は多くはないが息子からも頼むと言われて、この先十何年は私が払わないと」

 母は息子がいないと年金だけでは住めず、その息子が母に寄りかかる。

 関西で生活困窮者の支援をする生田武志さんは、貧困から人が落ちていく様子を、「カフカの階段」として図式化した。

 労働、家族、住居を失い、金銭を失い、ついには野宿という究極の貧困状態に。生田さんによれば、落ちるときは一段、一段落ちるが、最下段まで落ちると、簡単には上に上がれない。住所がないとハローワークで職も得にくく、生活保護を受けるのに時間がかかることも。

「生活保護の申請をしなかったり、申請しても追い返されて野宿になる高齢の方にもたびたび出会います」(生田さん)

・・・・・・・・・・・・・

★増え続ける「下流老人」とは!?ー年収400万円サラリーマンも老後は下流化する!?ー
***「YAHOOニュース 個人 *藤田孝典  2015-5/11」 より転載

日本には下流老人が大量に生まれ続けている。

下流老人とは、わたしが作った造語であり、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義している(藤田孝典『下流老人ー一億総老後崩壊の衝撃ー』朝日新聞出版 2015)。

下流老人とは文字通り、普通に暮らすことができない下流の生活を強いられている老人を意味する。

しかし、そのような老人をバカにしたり、見下すつもりはない。

むしろ、そのような老人の生活から多くの示唆をいただき、日本社会の実情を伝える言葉として、創造したものだとご理解いただきたい。

その下流老人は、いまや至るところに存在している。

スーパーマーケットでは、見切り品の惣菜や食品を中心にしか買えずに、その商品を数点だけ持って、レジに並ぶ老人。

そのスーパーマーケットで、生活の苦しさから万引きをしてしまい、店員や警察官に叱責されている老人。

あるいは、医療費が払えないため、病気があるにも関わらず、治療できずに自宅で市販薬を飲みながら痛みをごまかして暮らす老人。

夏場に暑い中、電気代を気にして、室内でエアコンもつけずに熱中症を起こしてしまう人。

家族や友人がいないため、日中は何もすることがなく、年中室内でひとりテレビを見ている状態にある人。

収入が少ないため、食事がインスタントラーメンや卵かけご飯などを繰り返すような著しく粗末であり、3食まともに取れない状態にある人。

ボロボロの築年数40年の持ち家に住んでおり、住宅の補修が出来ないため、すきま風や害虫、健康被害に苦しんでいる人。

わたしたちのもとに相談に来られる高齢者はこのように後を絶たない。

内閣府「平成22年版男女共同参画白書」によれば、65歳以上の相対的貧困率は22,0%である。

さらに、単身高齢男性のみの世帯では38,3%、単身高齢女性のみの世帯では、52,3%である。

単身高齢者の相対的貧困は極めて高く、高齢者の単身女性に至っては半分以上が貧困下で暮らしている。

現在すでに約600万人が一人暮らしをしており、うち半数近くはこのように生活保護レベルの暮らしをしている。

公的な相対的貧困率の指標を用いて、少なく見ても、一般世帯よりも高齢者世帯の方が貧困状態にある人々が多い。

年金の受給金額が低いことや、働いて得られる賃金が少ないこと、家族からの仕送りも期待できないなど、収入が低い理由は多岐にわたる。

そして、深刻なのは、下流老人の問題は現役で働く世代も将来陥る問題であるということだ。

現在65歳の人で20歳から60歳まで厚生年金に加入していて、40年間(480か月)保険料を払ったとする。

年収が400万円を超えていた場合を想定し、平均月給与が38万円とする。

その場合、厚生年金部分は、年間約120万円支給される。国民年金部分は、年間約78万円支給される。

だから、合計金額は約198万円で、月に直すと約16万5千円が支給される年金ということになる。

あるいは、そこまでの収入がない場合もある。そもそも実質賃金も下がっているわけだから、平均月収が38万円もないという場合も多い。

40年間の平均給与が月25万円で計算してみる。そうすると、現在65歳の人は、厚生年金部分は約79万となり、国民年金部分は78万となる。

合計しても157万であり、月額 約13万円しか支給されない(日本年金機構の水準により計算)。

国民年金のみの場合では、年間の支給額は約78万円だけであり、月額は約6万5千円だ。

そして、これから年金支給額は下がることが予想されている。この支給水準を保つことも難しい。

要するに、実際に年収400万円程度だと、「老後にもらえる年金額は月20万円を下回る」ということが分かる。

そして、非正規雇用や不安定雇用が拡大し続けているなかで、それ以下の年収であれば、生活保護基準を割り込んだ年金支給額しか受け取ることができない場合も多く想定される。

さらに、忘れてはいけないのは、年金受給者には課税や保険料徴収がある。実質の手取り金額は、ここからさらに数万円減少する。

高齢期は病気や介護など予期せぬ出費が増える時期でもある。

それまでに、個人的にも政策的にも、相当な準備をしておかなければ、下流になってしまう。

「あなたの老後は下流ですか?」と聞けば、残念ながら多くの人が「YES」と答えざるを得ない時代が間もなくやってくるだろう。

高齢者の貧困は、とても自己責任などといって本人を責めていられるような悠長な状況にない。

過去に『「NHKスペシャル 老後破産」を防ぐためには』というYahoo!記事を配信した。こちらも参照いただきたい。

大きな反響があり、引き続き、多くの人に高齢者の貧困や下流老人の存在を知ってほしいと思っている。

間もなく、この「下流老人」に関するまとまった拙著を刊行する予定である。

それに先立って、今回は「下流老人の実態の一部」、「高齢者の貧困率の高さ」と「年金支給水準の低さ」について、簡単な短い記事として配信しておきたい。


*藤田孝典 :NPOほっとプラス代表理事、聖学院大学客員准教授。1982年生まれ。埼玉県越谷市在住。社会福祉士。首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー。生活保護や生活困窮者支援の在り方に関する活動と提言を行う。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授(公的扶助論・相談援助技術論など)。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。著書に『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版 2015)『ひとりも殺させない』(堀之内出版 2013)共著に『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』(岩波書店 2015)など多数。
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