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高村薫の「3.11後の言葉」

★「3.11後の言葉」高村薫氏

①『高村薫さんが語る “この国と原発事故”』NHK「ニュースウォッチ9」インタビュー
(2011年5月3日)

インタビュアー(大越健介NW9キャスター)
ナレーション:*

(大越キャスター)
一進一退が続く福島第一原発。今回の事故は私たちが原子力にどう向き合うべきかを考える上で、大きな分岐点になったとも言えそうです。これまで原発を題材にした小説を発表し、その脆さや、原発をめぐる社会の歪みと言う物を問いかけてきた大阪在住の作家、高村薫さんにインタビューしました。
 
高村)25年前のチェルノブイリ原発の事故をきっかけに、原発の持つ危うさに関心を持ってきました。その5年後に発表された小説「神の火」。原発の構造を徹底的に取材し、テロや戦争に対して脆弱だと警鐘を鳴らしました。しかし今回、恐れていた事態が津波で引き起こされた意味は重いと考えています。

大越)原発がやられたんだ、と知った瞬間、どんなことを思われましたか

高村)自分が生きている間に、こう言うことが起こるとはよもや想像していなかったので、この先も日本の国が、国としての形をちゃんと保って存続できるかどうか、それくらいの瀬戸際に立たされている大きな事故だと思うんですよ

*【何故、事故は避けられなかったのか。高村さんは、非常用のポンプや電源が屋外に設置され、対策が施されていなかったことに愕然としています。】

高村)『想定外』という言葉が使われていましたけれど、今回の場合にはそもそも想定しなければならないことが想定されていなかったという意味では、『人間のやることには限界がある』以前の話で『問題外の事態』だったとわたくしは思っているんですね。『これで大丈夫だろうか』という想定をするときに、非常に恣意的に自分たちの都合のいいように作ってきたという感じがします。ですからこれはわたくしは、『科学技術のモラルの問題』だと思います。

*【さらに、高村さんが厳しい視線を送っているのは「政治」です。原発推進の是非をめぐる対立。政治家が客観的データを元に論ずるより先に、原発を「政争の具」にしてしまったと感じています。】

 村が二分され賛成反対に分かれて対立する不幸な歴史がずっと続いてきたわけですよね。その中で、本当の技術的な問題が結局誰も理解出来ないまま、あるいは正しい情報が出ないままになってきた

*【高村さんは2005年に発表した著作の中で、原発誘致に携わった政治家にこう発言させています。「電源多様化を名目に、わが国では代替エネルギーとしての原発増設に拍車がかかった。疾走する原子力事業に対して、政治は時々に正しい舵取りを成し得たのか否かだが、答えは少々心もとなかったと言わざるをえない」(高村薫:著「新リア王」より)】

高村)この日本の原子力政策が行われてきた半世紀は‘55年体制’と同時でしたので、原発の問題が常に賛成か反対かに分かれて、常にイデオロギーと一緒にされてきたんですね。それが非常に不幸なことで、わたくしたちが消費者あるいは国民として、イデオロギーや政党色を(脇に)置いて、まさに科学技術としてどのような技術的な評価が行われてきたのかを知りたいんですね。

*【そして、事故が起きた今こそ、判断に必要なデータがあると指摘しています。】

高村)この地震国で原子力発電をするときのコストを、もう一度冷静に計算する必要が絶対にあると思うんです。それは例えば、耐震化工事にかかる費用、あるいは事故が万一起きたときの保障や賠償の費用。その上でわたくしたちが、それでも原発を使うのか、それこそわたくしたちの選択にかかっていると思うんですね

*【最終的な選択を迫られるのは私たち自身だ、という高村さん。日本のエネルギー政策や暮らしのあり方が問われていると考えています。】

高村)わたくしたちが今できるのは、逃れられない現実に耐えてみつめ続けるか、あるいは目をそらしてなかった事にするか、逃げるか、なんですね。わたくしは逃げてはならない、と思いますね。現実に福島で、生まれ育った土地、仕事も家も子どもも何もかもある土地を追われて現実にきょう明日にも逃げていかなくてはならない方達がおられる。それをなかった事にして、時間が経てば元通りになるという根拠はどこにもない。

大越)これだけのことがあっても、今の豊かな電力供給を原発がになっている以上は、それに乗っかって生きていく道を無意識に選択している人達も実際多いですよね。

高村)これまでと同じように生きるという選択肢はないんだと思っています。わたくし自身は、今すぐには無理だけれども10年とかいうスパンで考えたとき、日本は(原発から)脱却をして次のエネルギー社会に進むべきだと思っています。原子力発電という技術を否定するものではありませんけれど、日本は地震国なので無理だと、そういう理由です。

大越)高村さんは、「自分は科学技術に対して全面的に信頼を持って育ってきた世代で、科学技術というものを前向きに評価している」ということでした。そこで、この震災を機に次世代のエネルギー社会を作るという夢を掲げて一歩抜け出すことを、日本は考えるべきではないかと話していました。原発を徹底的に取材して警鐘を鳴らしてきた作家の良心が、そう語っているように思えました。

◎文字起こしの引用先 http://akisadoor.blog118.fc2.com/blog-entry-102.html

②『巨大地震の衝撃・日本よ! 作家・高村薫さん』
「毎日新聞」(2011年3月17日付夕刊)から一部を紹介。

「いつも強く思うのは、原発の技術者と私たち一般人との認識の根本的なズレです。原発は実験室にあるわけではなく、一般社会のなかで住民の生命と隣り合わせで稼働している」。わが国の原発の歴史は約半世紀に及ぶ。「これほどの大事故がなかったのは奇跡です。安全性の根拠としていた格納容器に損傷の恐れが発覚した今回、私たちの社会常識の方が正しいことが明らかになった」。なぜ、「安全神話」は築き上げられたのか。「電力会社や国、政治家の責任は重い」と強い口調で訴える。

大阪府吹田市の閑静な住宅街に高村さんの自宅はある。ここで高村さんは1995年、6,400人が犠牲になった阪神大震災を体験した。以来、自然災害で失われた命について深く考え続けてきた。あれから16年。「教訓は、生かされていない。今、そう思います」

阪神大震災では、高層マンションが建つ地域で、地面が軟弱化する液状化現象が見られた。だが、東京の湾岸地域をはじめ名古屋や福岡など大都市では、タワーマンションが新たにそびえている。大阪も例外ではない。高村さんは「大阪の中心部には活断層があり、その上に主要な都市機能がのっている。東京も当然、首都機能の分散が進むと思ったら、逆に集中に向かっている」と指摘する。

国の地震調査委員会は首都直下地震について、阪神大震災(M7.3)と同規模の地震が今後30年以内に70%の確率で起きると予測、中央防災会議は最悪の場合は死者1万1,000人と予想する。

地下深く穴を掘り、建物を高層化する技術は日進月歩だ。「人間は、技術を開発すると必ず活用する。地下鉄もビルもその深さと高さを競ってきた。海抜0メートルのまちができたのも技術があるから。20世紀の文明はそのように進んできた」

高村さんは「私にはタワーマンションに住む人の気持ちがわかりません。エレベーターが止まったら、どうやって水を持ち運びするんですか。それが日本の現状です。地震に対する備えは、次の100年の暮らし方を考える一部なんです。被災していなくても、自分のことのように考えなければならない」。日本人の防災意識に疑問をなげかける。

<自分だけは大丈夫>

被災していない日本人は、自然の猛威に直面してもまた、根拠のない楽観に逃げ込もうとしているのではないだろうか。

「自然災害は人間の歴史の中では起こりうる。しかも、高齢化が進む21世紀という新しい時代は、高度経済成長期とは違う暮らしの価値観が必要だと思う。より人間のサイズに合った生活を選択する方が、より自然で無理のない社会ができる気がして仕方ない」

活断層の真上で暮らす日本人が、震災を人ごとで済まされるはずがない。島国である日本列島の海底には、多くのプレートがひずみをたたえながら潜んでいる。日本という国が存在する限り、地震という難から逃れるすべはない。

引用元 http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10880835385.html

③『原発を捨てられるか否か 未来への選択 決断の時』
北海道新聞夕刊(2011年4月20日)

未曾有。想定外。壊滅的被害。東日本大震災発生から1カ月余、私たちはどれだけこれらの言葉を繰り返したことだろう。地球規模の自然の前で人間の営みはときに為(な)すすべもないことを思い知らされてもなお、被害の大きさを捉えきれず、受け入れることもできない私たち日本人のいまの思いが、これら紋切り型の言葉に集約されている。

<中略>

今回の大震災では、福島第1原発の原子炉4基が冷却系の外部電源を失い、一部が炉心溶融に至るという最悪の原子炉災害が引き起こされた。水素爆発による原子炉建屋や、格納容器の損傷と、高濃度放射性物質の大気中や海への漏洩は、半径数十キロ圏の住民の生活を不可能にしたばかりか、飲料水や土壌、農畜産・海産物への放射性物質の蓄積が、周辺地域の生活経済を将来にわたって崩壊させようとしている。さらに、日本からの食料品の輸入禁止措置に踏み切る国が増え、観光客が消え、投資も縮小して、日本経済も当分冷えきってゆくだろう。原子力が安価な電源だというのは大嘘である。

この世界有数の地震国で、チェルノブイリと比較されるほど深刻な事故を引き起こした日本の商業原発は、もはやどんな理由をつけても、存続させるのは無理だろう。今回私たちは、原発が安全か否かという半世紀にわたる論争がいかに無意味だったかを学んだ。問題は、安全か安全でないかではない。そんなことは神しか知らないのであり、要は私たちが受け入れるか否か、だけなのだ。将来的に原発を捨てて電力不足に苦しもうとも、次の大地震と原子力災害に怯えて生きるよりはいいと思えるか、否か。いま私たちは、未来のためのそんな選択を迫られるほど決定的な地点に立っていると思うべきである。
 
このまま漫然としていては中途半端な復興と、経済の縮小衰退が待っているだけであれば、決断の一つや二つしないでどうするか。
 
私たちはいま、16年前とは比べものにならない厳しい未来を予感し、不安と不透明感に包まれている。欲しいのは小さな安心である。原発の不安が一つ取り除かれたなら、代替エネルギーへの転換に向けて多くの新産業が動きだす。それが希望を生み、被災地にも仕事をもたらす。折しも統一地方選挙が行われているが、政治家はいまこそそうした希望を語るときだろう。

引用元 http://hakodadi.iza.ne.jp/blog/entry/2271683/

④政官財界は「思考停止」高村薫さんが大阪で講演

作家の高村薫さんが25日、大阪市で開かれた関西プレスクラブの会合で講演し、福島第1原発の事故を体験しても原発から撤退しない政官財界を「思考停止している」などと批判した。原発事故の映像に「破滅の予感がした」という高村さんは「発電コストや電力の安定供給など、現実的な制約を全て勘案しても、国民の生命の安全という見地から商業原発から撤退する結論が出ると思った」。だが予想は裏切られ「当然あると思っていた『道理』がなかった」と失望した。(2011年07月25日)

引用元 http://www.47news.jp/movie/general_national/post_4626/
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