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環境主義住宅を解く 第34回

 いろんな人から「どの断熱材がいちばんいいですかね」という質問を受ける。本当によく質問されるからみんなかなり関心が高いのだろう。私はそういうときに「どれとは言えない。何を重視するかによって変わってくるから」と答える。車で言えばポルシェとクラウンとプリウスとカローラを比べるようなものだ。
 「断熱材も自然素材で」と考える人はそこから選択に入っていけばよいし、「できるだけ安く、でもしっかり断熱したい」と考える人にはそれなりの選択肢がある。ただ、断熱材は「断熱する」ということが主目的だから、断熱性能の低いものを選ぶという考え方は合理的ではない。

 家のつくり手から「この断熱材はよく効く」という話を聞くことがある。でも私はその手の話をあまり信用していない。だって、ちゃんと数値的に確認して言っているわけではないから。少し前に2つの断熱材の断熱性能を比較する実験をしたことがあるが、同じ熱伝導率だったその2つの「断熱効果」は本当に見事に一致していた。エライもんだなあと関心した。やっぱり断熱材の断熱性能は熱伝導率という数値で評価すべきだということを改めて認識した。

 ということで、まずは断熱性の選択基準は熱伝導率ということになる。また、この数値と厚みで求められる熱抵抗と呼ばれる数値が実際上の選択基準となる。だから「こういう断熱材を使っています」という話で終わるようなつくり手は断熱のことがわかっていないと思ったほうがよい。「少し難しい話ですけど、この断熱材はこれくらいの熱抵抗を持っていて…」というような話をするところは断熱や断熱材のことがわかっている。

 断熱性能(熱伝導率や熱抵抗)の次に重要なのは「湿気との関係」だろう。これはなかなか難しいが、次の2つのポイントがある。
①湿気を通しやすいか、通しにくいか
②湿気を吸ったり吐いたりできるか
 ①については「通しやすいほうがいい」と思う人が多いだろう。つくり手にもそう思っている人が多い。でもそれは違う。なぜなら、湿気を通しやすい断熱材は、冬場に室内の湿気が断熱材をすり抜けて外側に流れていくから。もしそこに湿気を止めるような部材(たとえば合板)があれば、そこは断熱材の外側なので温度が低くなっているから、そこで結露してしまう恐れが出てくる。
 つまり、湿気を通しやすい断熱材を使う場合、そうした結露を起こさないようにするには、「断熱材に湿気が入ってこないように、その室内側でせき止める」か「断熱材の外側に湿気を止めるような部材を使わない」ということをしなければならない。もちろん、そうしたことをすればよいわけだけど、湿気を通さない断熱材なら、そんな面倒くさいことを考えなくてよいという有利さがあるわけだ。
 具体的には「繊維系の断熱材」は湿気を通しやすく、プラスチック系の断熱材は湿気を通しにくい。エコ系と呼ばれる断熱材の中で言うと、羊毛、ポリエステル(商品名で言えばパーフェクトバリアが有名)、セルロースファイバーなどが湿気を通しやすいものになる。プラスチックが嫌いな人には残念だろうが、この点ではプラスチック系の断熱材は有利だ。
 では羊毛とかセルロースファイバーはよくないということなのか?いやそれは違う。そのへんが②の話に関わることになってくるが、それは次回にご説明しよう。
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