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21.博多部めぐり

 僕の仕事場のある平和町から天神、博多駅、六本松あたりまでは、自転車でゆっくり走っても20~25分もあればアクセスできる。天気が良ければ、仕事の打合せでなくてもカメラをリュックに入れ、ふらっと自転車でまちなかを巡ることがあるが、旧博多部やその周辺には興味を惹かれる場所が多い。旧博多部は概略、那珂川と御笠川(旧称は石堂川)に挟まれた博多駅から築港までのエリアで、聖福寺のある御供所町、櫛田神社のある上川端町、博多座のある下川端町、数年前に統合された博多小学校のある奈良屋町などは良く知るところである。福岡の町にくらべ博多の歴史はずっと古く、魏志倭人伝の時代にも遡る。中世、貿易港として栄えた博多が戦国時代の戦乱で荒廃したのち、豪商神屋宗湛たちの願いで秀吉が復興を司令し、石田三成らが奉行になって町割りが行われた。仏教思想に基づく都市計画は町を七条の袈裟に見立てたもので、七流れ(「流れ」は街路であり連合町内会である。)は江戸時代から敗戦の日まで博多の町割りの基本骨格となった。昭和二十年六月十九日夜の空襲で、旧い博多は焼け、わずかに御供所町から石堂川沿いの聖福寺近辺が残った。現在、博多駅から北西(築港)に延びる幹線道路「大博通り」沿いには、銀行や保険などの高層の業務ビル等が建ち並んでいる。それでも、この通りに直角に交わる幹線道路(北から那の津通り、昭和通り、明治通り、国体道路)によって囲まれた街区の内側には表通りとは違った博多らしいまちの表情がまだまだ残されている。僕が自転車に乗ったり降りたりして散策するのは、そういうまちの内側にある路地などである。聖福寺境内の廻りには、保育園や小さな禅寺などが並んでいて、普段歩いている人は少ない。境内の楠は戦後植えられ、間伐されなかったため、ひょろっとしているのが残念だ。以前は風化した聖福寺の土塀の風合いが心地よく、また四季折々の庭木が楽しめた。原種の木蓮や山吹が見事な花を咲かせる西光寺、かつて座禅道場となっていたらしい一朝軒、上呉服町との境界にある石の山門もよく辿るコースだ。山門のあるあたりは旧いたたずまいを残していて、昔は下普賢堂町と呼ばれた。昨年の雪のちらつく日、連れとここを歩いていると、自転車に乗ったお爺さんが路上に倒れていて、近所の店の小母さんと世話をしたことがあった。好きな酒が辞められなかったらしい。最近、買うことがなくなった祝時の極彩色の蒲鉾をつくっている店があったり、懐かしい木賃アパートなども見かけるし、山笠の季節に訪ねると狭い路地に思いがけなく子供御輿の姿を見つけたりする。聖福寺の東を流れる御笠川河畔はこの辺りだけは蛇行した州浜が残り、濃い寺の緑とあいまって心地よい風景をつくっている。橋を東に渡ると千代町に入る。ここにも国道3号線沿いの造り酒屋、「せんしょう」(旧大津町商店街の店が移転した先か?)、崇福寺など散策のポイントがある。造り酒屋では、毎年二月十一日、新酒を披露する蔵開きがあり、打ち立ての蕎麦と升酒を楽しむ人たちで賑わう。「せんしょう」は、三年ほど前、知り合いの建築家に教えてもらったのだが、韓国料理の食材が揃っている店が二店あって、これからの季節、チャンジャや牡蠣キムチなどを求めて鍋に加えると旨い。鮮魚店も多く、とても安価で新鮮、一人暮らしの高齢者などでも求めやすいように店主が考えてくれている。崇福寺は黒田家や頭山満などの墓がまつられている。別に展墓趣味(亡き文人たちの墓を訪ね歩き、その作品や人となりを静かに偲ぶ。)があるわけでは無いが、墓碑や庭のデザインに興味があって墓地や寺を歩くことがある。ここには、或る写真家の墓碑があって印象に残っている。昨年春の福岡地震のあと訪ねてみると、あちこちの墓碑が倒れていたが、さすがに黒田家などの大きな碑はびくともしていなかった。千代町から、昭和通りを通って西へ戻ると下川端の博多座と接する綱場町に出る。ここは仕事の関係で比較的最近、訪ねるようになった。地域計画コンサルタントのオフィスがこの一画のビル最上階にあり、楽しくお付き合いをさせてもらっている。ある日オフィスでの打合せが終わって、Tさんと階段踊り場に出て、煙草を一服しながら、ビルの谷間にある旧い低層の建物群を俯瞰した。紙や服地の問屋や昔から営んでいる酒屋、居酒屋などが寄り集まった街区の内側には、建築が大型化、高層化してきた表通りとは異なる時間が流れているようだ。仕事を終えると、Tさんとたまに、その中の角打や居酒屋で一杯やることがある。角打のおばさんも居酒屋の大女将もかなりの高齢だが元気がよく、こちらが訊ねると昔の町の様子などを話してくれる。客層は中高年が多いが、大将の腕が冴えていて、暖かい雰囲気の居心地の良い店である。近くには博多で一番旧いと言われるクラシック喫茶もあって、お洒落な年輩者のサロンともなっている。都心で働くサラリーマンや地元の人たちのくつろぎの場となっているビルの谷間、ここにも佳き時代の博多が息づいている。



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